Chapter 1

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 その質問には、少し迷った。 「……それもあります」 「も?」  肩と首が異常に痛くなるのがどういう時か、自分でも自覚しているが、今までしてきた話にも増して言い辛い。少し悩んで、ダイレクトに言わなくていいのだと気が付いた。 「えっと……一番痛いのは、知らない人たちと色々話さないといけない所に行った時です」  橘の手が顎の方まで移動してきた。そんなところまで触るとのかと、尚晴は少し身構えたが、それも一瞬だった。その手の温かさに身体の力は自然と抜けて行った。絶妙な強さで首の筋を揉まれて、まさにこれが求めていたものだとすら思うほど気持ちが良かった。 「ここも酷いですね。緊張したりストレスが溜まったりすると、噛み締めてないですか?」 「あーあります、多分。身体に変な力が入ってしまうんです」 「それですね。難しいとは思いますが、意識的に顎の力を抜くようにしてみて下さい。緊張するのは、講師のお仕事の方ですか?」 「え?」 「色々話さないといけない時と仰ったので」 「あ、プ、プ、プライベートで……」  無事に追及を逃れたと思っていたところ、さっきの話を突っ込まれて尚晴は言葉が閊えて真っ赤になってしまった。     
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