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「分かりました。それじゃ、うつ伏せに寝て下さい。先に機械を使いますね。これで筋肉を柔らかくします」
橘は詮索してこなかった。ペチャっとしたものを首と腰に貼られた。ほんの僅かにそれが筋肉を動かしているのが伝わってきた後、タオルを掛けられた。ぽんっと、橘の手が背中に置かる。
「寒かったり暑かったりしませんか?」
問うている間も、背中に置かれた手はそのままだった。尚晴は頷いた。何か尋ねられた時の答えはいつも決まっている。
「大丈夫です」
「では少しこのままで。何かあったら我慢せずに呼んで下さいね」
背中越しにカーテンの閉まる音がして、橘の足音が遠ざかっていく。少しとはどれくらいなのか分からないが、薬のせいもあり睡魔が襲ってきた。橘に肩を揺すられるまで、機械が止まったことにも気付かず眠ってしまっていた。
それから受けた橘の施術は、全く痛くなかった。それどころかやっぱり気持ち良かった。呼吸が深くなり、昔、整体を受けた時のように、痛みで身体に変な力が入って疲れることもなかった。もし息が苦しくなったり気分が悪くなったらどうしようという思いは、杞憂に終わった。
施術料金を払うまでに、揉み返しが酷くなければ次回も来ようと決めていた。
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