Chapter 2

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Chapter 2

「立っていただいていいですか?」  指示された通り、尚晴は施術台を降りた。ここ最近、尚晴は頻繁に橘の所に通って治療を受けている。家の近くだし、身体は楽になるし、橘と話をすると気分転換になり仕事のやる気も出る。いいことばかりだ。橘はじっと尚晴を見詰めてくる。もっとも彼は、尚晴を見ているわけではない――単に患者の具合を確認しているだけだ。分かっていても、全身を舐めるように見られるのはどうにも落ち着かない。  通い始めてから知ったことだが、この診療所は橘ではなく彼の父が院長をしている。父親が担当している日は混んでいると橘は言っていたが、通って数週間のうちにも、日毎に橘の患者は増えていた。こんなに丁寧で優しい先生がいるのだから当然だろう。 「右手、最近、何かしましたか?」 「え?」 「もう一度座って下さい。で、右手はここに、左手はここへ――」  腕をとられ、人形のように動かされた後、橘は後ろから尚晴の身体に腕をまわしてきた。一瞬ビクっとしたが、「深呼吸して下さい」と言われ、我に返る。橘とて、好きで男を抱き締めるような格好をとっているわけではない。ただの治療だ、緊張する必要はない。 「はい、OKです。いつもの治療とは関係ないですが、肘のところが右だけ、こう――外側に向いてたんですよ」  橘は自分の腕を見本にして説明してくれる。 「あっ……」
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