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婚活、それが諸悪の根源だ。毎週のように、ネットで調べた婚活パーティーに出かけて数か月になる。知らない女性と分刻みで話さないといけないスタイルに、緊張とストレスから変な肩の凝り方をするようになって、それが頭痛、そして耐えられないほどの腰痛まで引き起こすようになったのだ。ちゃんと言えず仕舞いだった橘の元を訪れた理由を、尚晴はやっとの思いで橘に告げた。予定では、いつも通り橘がうまく言葉を引き出してくれて、婚活でどんな思いをしているか、そして体がどんなふうに痛くなるのかを話すつもりだった。だが、少し間の空いた後の返答は、橘にしてはやや乱暴だった。
「孤独死って、美郷さんはいくつですか」
「三二ですけど」
婚活のくだりをさらりと流されて、尚晴は少し面食らった。横目で様子を伺うと、橘は整った顔を険しくして、目と眉の間だけでなく、眉間まで狭くなっていた。
「知ってますよ。そういうことじゃなくて――ネガティブ過ぎますよ。いいですか、俺が言い聞かせてあげます。そこまで自己評価を下げちゃいけません。その気になれば結婚もできるし、まだまだいくらでも、これから楽しいことがあります」
「はぁ……でも……」
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