Chapter 2

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 慌て気味に帰り支度をして、施術料の支払いを終え、自動ドアをタップする。橘も半分外へ踏み出し、背を伸ばして空を見上げた。 「良いお天気ですね」 「そうですね」  人の動きが少ない平日の昼間は、尚晴の一番好きな時間だ。歩道には少し前までピンクの花を咲かせていた木々が、勢いづいた緑の葉を茂らせている。 「あ、そうだ、美郷さん」  橘はそう言って、尚晴の肩に手を置いてきた。尚晴は橘を見上げた。尚晴の身長は一七〇㎝を少し超えた程度だが、橘はそれより十㎝以上はゆうに高い。 「頓服の精神安定剤って、ここに来られる時も飲んでいらっしゃいますか?」 「え……まぁ、はい」  悪いことを咎められたような気分で、尚晴は視線を彷徨わせた。心療内科の方とも相談しながら、できるだけ減らせる薬は減らしていく方がいいと、通い始めた頃から言われている。血流が悪くなったり、痛みが出やすくなったり、薬が何らかの影響があるらしいということは、尚晴自身も何となく自覚していたので彼の言うことに納得はしていた。でも、まだ不安の方が勝ってしまう。     
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