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「美郷さん、お待たせしました。どうぞ」
カーテンの閉まっている施術台からは、低周波治療器の停止を告げる電子音が鳴った。そちらの患者が施術を受けている間、尚晴が今度は低周波治療をしてもらうことになる。もっと患者が増えたら、これではまわらなくなるだろう。忙しくなってしまったら、橘も今のように気さくに話をしてくれなくなるかもしれない。
「あれ? 美郷さん、疲れてます?」
施術台に腰掛けると、首筋から触診を始めた橘にそう尋ねられた。
「平気です」
さっきドアを開けた時、自分はなかなか嬉しそうに挨拶をしていた自覚があるが、今は何となく憂鬱だった。橘と話す時間が減ると思うだけで、一体、この気持ちの変わりようはどういうことなのだろう。
「んー……腰――やっぱり右側のここですよね」
「あっ……」
的確に一番痛む場所を押さえられて、尚晴は思わず身を竦めた。
「すみません、辛いですよね」
「大丈夫です。以前みたいに動くと死ぬそうになることはないです」
橘はクスっと笑って、再び尚晴の首から肩に手を滑られた。
「美郷さんは、表現が面白いですね――ああ、首も酷いですよ。ガチガチになっちゃってる。またソファでお昼寝しました?」
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