Chapter 3

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 身振りでうつ伏せになるように示されて、尚晴はそれに従いながら口を尖らせた。 「してないです。ソファで仮眠を――」 「同じじゃないですか」  低周波のパッドをペタペタ貼りながら、橘はポンッと肩を叩いてきた。 「じゃ、このまま暫くお待ち下さいね。寒くないですか?」 「はい、大丈夫です」  お決まりのやり取りの後、橘は隣のカーテンの向こうへ行ってしまった。仕事で寝る時間が取れなかったのだ、ということをうまく伝えられなかった。がっかりしながら固めの小さい枕に額を押し付けていると、隣の女性が、さっきのお婆さんと同じように、橘のことを「啓先生」と呼んでいるのが聞こえてきた。彼女の喋り方が必要以上に甘ったるいことに、神経を逆撫でされる。他にすることもないので、二人の会話に聞き耳を立ててしまう。その患者は全然治療に関係ない話をしていた。テニスサークルに所属していて、姑とうまくいっていないらしい。主に人間関係の愚痴だった。橘の返事は彼女の事情を既に把握しているらしいものだった。男がやりがちな、「ああすればいい」「こうすればいい」を彼は一切言わず、まるでカウンセラーのように相手にうまく寄り添って、熱心に耳を傾けている。     
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