Chapter 5

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 橘は注文を済ませると、再度くたびれたエコバッグに目をやった。 「すごい量ですね。身体痛めるのも納得です」 「す、すみません。確かに重いです」  歪んだ尚晴の骨格を治すのは橘だ。まとめ買いした本が軽く十冊以上入っている。ほとんどは趣味の文庫本だが、それでもその冊数となると結構重い。しかもそれだけじゃなくて、書類の入ったダサい仕事鞄もある。 「持ってみていいですか?」 「はい」  尚晴の鞄二つまとめて持ち上げて、橘は苦笑する。 「駄目ですよ、これ。ちょっと考えた方がいいですよ。凶器じゃないですか」 「講師の仕事に行く時は、仕事鞄だけで――」 「これがもうアウトです。その上、こんなに本を……無茶しますね」  買い物はできるだけまとめて済ませたいと思うので、荷物まみれにはなるし、家に帰ると肩や腰背中が痛い。それでもネットで買って、送料がかかるよりはいいというのが本音だ。 「もっと筋肉付けないといけないとは思うんですけど」 「その前に元となる肉がないと。でも美郷さん小食ってわけでもないですよね」 「ええ、最近は普通に食事してて、これなんです」  身長も高くないが、体重も少し大柄な女性とさほど変わらないほどだ。 「んー、おうちでしていただけるストレッチもまた考えておきます」     
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