486人が本棚に入れています
本棚に追加
/348ページ
ちょっと来いと無理やり腕を掴まれて連れてこられたのは、特別棟の一階にある用務員室だ。
ドアを入ると小さな玄関があり、靴を脱いで上がるとすぐにソファーがあった。
「座ってろ」
言われるままに座ると、佐藤さんは奥にある対面式のキッチンに入って行った。しばらくするとコンソメの優しい香りが漂ってきて、野菜が沢山入ったポトフを目の前のテーブルの上に置た。
「最近、ちゃんと飯食ってないだろ」
「そんなこと……」
ないと言おうとしたが止めた。実際、この3日間ほとんどまともに食べていない。
兄がいたら無理やりにでも食べさせられると思うが、幸か不孝か一週間の出張でいない。
「何があったか知らないが、きちんと食わないと心も体もダメになるぞ 、そら」
スプーンを渡されたので、金色に輝くスープを少しだけすくい口に運ぶ。
「……おいしい」
「俺が作ったから当たり前だ。残さず食べろよ」
言い残して、佐藤さんは左手にあるドアの向こうに行ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!