空白

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ちょっと来いと無理やり腕を掴まれて連れてこられたのは、特別棟の一階にある用務員室だ。 ドアを入ると小さな玄関があり、靴を脱いで上がるとすぐにソファーがあった。 「座ってろ」 言われるままに座ると、佐藤さんは奥にある対面式のキッチンに入って行った。しばらくするとコンソメの優しい香りが漂ってきて、野菜が沢山入ったポトフを目の前のテーブルの上に置た。 「最近、ちゃんと飯食ってないだろ」 「そんなこと……」 ないと言おうとしたが止めた。実際、この3日間ほとんどまともに食べていない。 兄がいたら無理やりにでも食べさせられると思うが、幸か不孝か一週間の出張でいない。 「何があったか知らないが、きちんと食わないと心も体もダメになるぞ 、そら」 スプーンを渡されたので、金色に輝くスープを少しだけすくい口に運ぶ。 「……おいしい」 「俺が作ったから当たり前だ。残さず食べろよ」 言い残して、佐藤さんは左手にあるドアの向こうに行ってしまった。
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