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コーヒーの香りに誘われて目を覚ます。
「おはようございます。それは?」
「ルームサービスだ。飲むだろ?」
「はい」
正宗先輩は銀色のポットから湯気のたつコーヒーを上品にカップに注いでくれた。イケメンは何させても似合うなと改めて感じる。その上この笑顔……。食パンのCMとかに出れそうだ。
「よく眠れたか?荷物はそこに届いているから」
荷物は小さなボストン1つだ。2日分の着替えと水着しか入っていない。
「ありがとうございます。ぐっすり眠れました」
昨夜は本当にクタクタで、部屋について歯磨きだけすると荷物が届くのを待てずにTシャツとパンツで寝てしまったんだ。
シーツがさらさらでマットも程よい固さで気持ちよく、たぶん10秒くらいで寝たと思う。
「ご迷惑かけてすみませんでした」
「なんか子供みたいだったよ。12時過ぎると起きていられないのか?」
ククッと笑みを漏らす先輩に、「先輩こそ、歯磨きした後うがいの水を飲みそうになって慌ててましたよね」と言ってやる。
「あれはたまたま……」
「いいですよ。それより沖縄ですね。俺、実は初めてなんです。だから、色々教えてくださいね」
「色々か……。たぶんホテルのビーチで泳ぐだけだと思うぞ」
「それでもいいです。実は海水浴も初めてなんです」
そう、物心ついた時からずっと父が海外で働いていたので、長期の休みには母と兄と3人で父の赴任先を訪れた。長いときは1ヶ月とかで途中現地の子供たちが参加するキャンプに参加したりはしたが、大抵は山で海はなかったんだ。
「分かることならな。俺はもう済ませたからシャワー浴びたら朝食に行こう。煩い奴らが待ってるからな」
「はい」
煩い奴らか。たぶん伸也と光彦先輩の事なんだろう。
一穂はよく眠れたかな?
なんかワクワクしてきた。
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