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家族のために働いているのに、家族を悲しませるなんておかしいっていう人もいるだろう。だけど俺はそんな父さんがカッコいいって思ったんだ。 だから、先輩に対する同情だけで返事をしちゃいけない。何かを犠牲にするかもしれない覚悟が必要だ。 高屋敷を選ぶことによって、一穂との時間が取れなかったり、なかなか会えなかったりするかもしれないのだから。 「………もう少しだけ時間をいただけませんか。きちんと考えて返事をしたいんです」 「分かった。冬樹の答えを待ってるよ」 腕がほどけて、さっきまであった温もりが消えていく。 怖いと漏らした先輩を安心させてあげたいけど、それは今じゃない気がする。先輩の支えになることを決めたら、その時は………。 「ご飯行きましょうか?」 「そうだな、腹減った」 少しだけ、待ってくださいね
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