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*** 伸也を何とか宥めてやって来たのはステーキ店だった。 「沖縄の郷土料理の店かと思ってた」 一穂と一緒に俺も頷く。てっきりソーキそばとかチャンプルーを食べるんだと思ってた。 「え、沖縄って言ったらステーキでしょ。こっちの人はお酒のシメにラーメンじゃなくステーキを食べるほどステーキ好きなんだよ」 光彦先輩の言葉に伸也が賛同する。 「俺も肉がいい。よく運動したから牛丸ごとでも食べれそう」 見た目は細いけどさすがに男子高校生、食欲は半端ない。そういう俺の腹の虫も肉が焼けるうまそうな香りに誘われてぐうと鳴った。 それぞれ注文を済ませると、昼間見た魚たちの話になる。 特に俺と一穂は初めてだったから、すごく興奮していた。 「本当に来て良かった。あんなに間近に魚達を見られるなんて思ってなかったから。光彦先輩、誘ってくださってありがとうございます」 「いや、俺の方こそありがとうだ。沖縄には何度も来てるけど、今回の旅行が一番楽しいよ。なあ、正宗」 「そうだな」 「そうだよ。俺達中1からの付き合いだけど、旅行なんてしたことなかったから」 へえ、そうなんだ。まだ高校生だし、普通は子供だけで旅行なんてしないか。 俺の気持ちを読んだ千景が首を振る。 「そうじゃないよ。あの学園の生徒は仲良く見えてもそれは表面的なもので、実際は人脈作りだと思ってるんだ。だから、将来役に立ちそうな人としか付き合わないし、弱味も見せない。プライベートの旅行なんてありえないんだよ」 「まさか、そんな……」 そう言えばみんな登下校もバラバラだから、帰りに寄り道したり話したりもしない。学園内だけの付き合いなんだ。
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