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ホールでの生徒会長役員任命式を終えた俺達は、揃って生徒会室にやって来た。
数ヶ月前に1度だけ訪れた事のある部屋は内装などは変わってないが、何故か前より寂しい感じがした。
「はぁ、疲れた」
ため息をつく俺に会長、もとい副会長の高屋敷先輩が「お疲れ様」と声をかけてくれる。
「ありがとうございます」
「なんか分かるよ。俺も去年はそんな感じだったから。飲み物を入れるが、みんなもコーヒーでいいのかな?」
「僕がやります」
先輩の言葉にさっと反応したのは一穂だ。
一穂と先輩の間には少しわだかまりがあったのだが、今は解決して普通に接している。
「俺はコーヒーでいいよー」
「あ、俺……僕も」
会計の柿谷先輩がのんびりと答えると書記の千景も慌てて続く。
ぷっ、僕って何だよ。普段は俺って言ってるのに。
俺の顔が緩んだのを見た千景がキッと睨んだ。
高屋敷先輩が手を上げて一穂を制すると、コーヒーメーカーをセットした。ガガガという音と共に豆を挽くいい香りが広がる。
「この香り、いつもそそられるな」
「お前の言動はいつも………」
高屋敷先輩が呆れ顔で柿谷先輩を見た。
高屋敷 正宗先輩は1つ上の2年で、去年は生徒会長を務めた。身長188センチの長身に少し長めの黒髪、顔立ちは端正で頭脳明晰という非の打ち所がない人だ。生徒からも絶大な人気を誇っているので、今年も間違いなく会長に選ばれると誰もが思っていた。
けれど、結果は違った。人気投票の順位は発表されたが得票差は知らされてないので、僅かな差なら本当に申し訳ない。
「なんだ、情けない顔して。これからよろしくな、会長」
高屋敷先輩は俺の肩をポンと叩いた。
最初は誤解していたが、すごくいい人だ。
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
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