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隣に戻ってきた一穂が良かったねという風に微笑んだ。
やっぱり可愛いな。
「あれ、2人って付き合ってるの?」
柿谷先輩が俺達を覗き込んだ。
そう、俺と一穂は付き合っている。山岸 一穂は同じ1年でクラスメイトだ。身長は165センチ、茶色がかった黒髪にくりっとした大きな目が印象的だ。
一穂は俺の閉ざした心を開いてくれた大切な人で、優しくて面倒見がよく、守ってやりたいのに気がつくと俺を包み込んでくれている、そんなかけがえのない人なんだ。
「はい、付き合ってます」
「へえ、いいじゃん。じゃあ、さっき言ってた恋人って山岸の事なんだ」
「はい。だから、先輩は狙わないでくださいね」
一穂をグイッと引き寄せると、柿谷先輩が可笑しそうに笑った。
「桜庭って案外独占欲が強いんだな。了解、山岸には手を出さないって誓うよ。1年間一緒にやっていく仲間と揉めたくないからな」
「焼きもちやきめ」と言いながら、犬か何かを撫でてるように柿谷先輩は俺の髪をぐちゃぐちゃにかき回した。
気さくな人で良かった。
人付き合いが苦手な俺は、柿谷先輩とは気が合わないのではと密かに心配していた。去年生徒会長補佐をしていた友人の田辺 伸也から柿谷先輩の噂を色々聞いていたから。
伸也によれば柿谷 光彦先輩は高屋敷先輩と一緒に会計として生徒会役員を務めた人だ。身長185センチのすらりとした体型で栗色の髪と瞳を持っており、物腰が柔らかく気取らない性格で学園内外に多くの恋人がいるらしい。
恋人が多いと聞いてなんとなくチャラチャラしたイメージを持っていたが、会ってみると俺なんかより遥かに好感度が持てる。
「これからよろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
挨拶する俺を一穂が嬉しそうに見ていた。
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