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いつの頃からか、生徒会室では役員でも友人でもない桜庭 冬樹の話題をよくするようになっていた。
秋のある日、伸也はそっと指を開いて、大切に握っていた使いさしの消ゴムを見せてくれた。
昼休みに自分のが小さくて消しにくいって言ったら、2個あるからやるよって桜庭がくれたらしい。
「宝物にするんだ」
「良かったな」
嬉しそうな伸也の肩を光彦が優しくポンポンと叩いた。
「伸也、いい顔するようになったよな。冬樹のお陰だな」
「そうだな」
始めは桜庭と呼んでいた光彦は、今やすっかり冬樹呼びになっている。
「あっ、冬樹君の新しい写真がアップされてるぞ」
「おお、今回も可愛いな」
副会長と書記の先輩も既に冬樹君呼びだ。
みんなと同じように俺も呼び方を変えればいいのに、何故か頑なに桜庭と呼んでしまうんだ。
━━桜庭の事を考える度に沸き上がるこのモヤモヤした感情はなんなんだろう。
ニコニコ笑う伸也を少しだけ羨ましく感じた。
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