球技大会

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たまに本人の意思とは関係なく周りの関心を集めてしまう人がいる。 オーラがあるとかいうのが、そうかもしれない。 宗教家、経営者、政治家等が欲しくてたまらない能力だ。 桜庭の場合はたぶん迷惑している。彼は目立つのかが苦手だ。クラス役員や実行委員になりたがらないのもそのせいせいだろう。 なのに、皮肉なことに周りからの評価は上がるばかりだ。まずは容姿。そして成績。加えてにゃんこ王子のお陰で可愛さまであるとなると人気は鰻登りだ。 けれど、写真のような表情を期待して桜庭に会った奴はあれっと首を傾げる。実物の彼はクールな王子だ。彼にじっと見つめられると、妙な下心がある奴は見透かされているように感じて居心地悪く黙りこんでしまう。 ただ、彼は人を突き放さない。無意識なんだろう。寂しい心にすっと寄り添ってくれるんだ。 伸也が前に言ってた。 「正宗兄さんは俺に優しくしてくれたたった1人の人だから誰にも取られたくなかった。だけど、その事を後ろめたくも感じてたんだ。こんな自分勝手な感情を押し付けられた正宗兄さんや兄さんを好きな人達は迷惑なんだろうなって。そんな俺に冬樹は言ってくれた。好きな人がいるってだけで、例えそれが男同士であろうと俺はすごい事だと思うって。嬉しかったな」 それを言われた時に伸也は気づいたんだろう。 俺への気持ちは母親に愛してほしいと願う子供のようなもので、恋愛感情じゃないんだって。
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