球技大会

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気がつくと桜庭を探している自分に気がついた。 登校時、休み時間、1年の集団を見かけるとその中に桜庭がいるかもしれないと思ってしまうんだ。けれど、そんな淡い期待はいつも裏切られる。 ━━バカだな。 そう思うのに、1年を見ると自然に目が行くのを止めることが出来なかった。 そんなある日、図書室からの帰りに桜庭と廊下で会ってしまった。 あんなに会いたいと思っていたのに、実際に目にするとどうしたらいいか分からなくなってしまう。 対して桜庭は明らかに会いたくなかったという顔をしている。前に会った時の事を考えると無理もないとは思うが、心がズキズキと傷んだ。 けれど、それで返って冷静になれた。 話があると伝えると渋々ながらにオッケーしてくれたので、生徒会室に連れてきた。 部屋をキョロキョロと見回したり、遠慮して飲み物を断ったりする姿を見ていると、何だか可愛く思えてくる。 コーヒーメーカーから芳しい香りが立ち込める頃には、少し慣れたのか表情が柔らかくなっていた。 「コーヒー好きなんだな?」 嬉しそうに香りを嗅ぐのを見て聞くと、 「はい。最近美味しさが分かってきたんです」 と桜庭が笑顔を返してくれた。 「そうか」 びっくりしてそれだけしか言えず、とりあえず向かい合う席に座った。 「美味しいです」 たった一言、それも誰もが言う感想がこんなにも嬉しいなんて初めてだ。 「それは良かった」 急に言葉を忘れてしまったかのようにありふれた言葉を返す。 ━━俺はどうしてしまったんだろう。
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