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どうやら当分はお金には困らなさそうだ。
「それで、どういう仕事内容なのか詳しく教えてくれませんかね」
「うむ、授業で人間以外の存在や祟り、呪いについてやったね」
「ええ」
「実は、それらを解決して欲しいという依頼が来ていてね。それらをこなしていって欲しいんだ」
「とはいっても教授。俺は霊感なんて無いですし祓うこともできませんよ」
「それは大丈夫。あ、君。次は授業、あるのかい?」
「いや」
「そうか、ならちょうどいい」
高島はそう言うとついてくるようにと促す。
大学の正門前に待たされると高島は赤いスポーツカーに乗って現れた。
「乗ってくれ」
そう言われ啓人は助手席に乗ると高島は車を走らせた。
車を走らせてからしばらく経つと啓人が住む神代市内でも有数のビル街本町大通へと出た。この本町大通は大手銀行や大企業のビルが建ち並び、この地域の金融・経済の中心地の一つとなっている。
高島はそんなオフィス街の一角にあるビルの前で車を止めた。
ビルは近代的でモダンなデザインをしており、警備員が厳重に出入口を守っている。
「ここって……」
「ああ、高島グループのビルだ」
高島グループという名を聞いて知らない人はいないであろう。旧財閥系の流れを汲む企業を中心とし、今日の政界に影響を与えているぐらい権力を持っている企業グループだ。
高島春子はそんな企業グループ総帥の一人娘、所謂令嬢である。
高島に付いていきビルの中へと入る。階分のコリント式列柱が並ぶ古典主義様式に則ったデザインをした外観とは対照的に、内部は洗練されたモダニズム建築で出来ている。
エレベータに乗り最上階に着き扉が開くと英国のチューダー王朝風のインテリアに囲まれた部屋が現れた。
「とりあえず、座ってくれたまえ」
「ああ、ありがとうございます」
そう言って啓人はソファへと座る。柔らかいソファは啓人が人生の中で座ったことがないほど柔らかく上質なものだった。
途端にソファの前にある机の上に紅茶が用意される。紅茶にしてはフルーティーな香りを放つその紅茶はさぞかし上質なものなのだろう、飲んでみると今まで飲んだこともない味だったが上品な味わいが忘れられなくなるほど美味しかった。
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