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「さて、本題に入るわけだが」
高島はそういうと啓人と向き合う形で席に座った。そして、さっき啓人が乗ってきたエレベータの方を見てそろそろだなと呟く。
そう言うや否やエレベータの扉が開いた。
「入っておいで、ここには君に危害を加えるような人は居ないよ」
高島がそう言うとエレベータの中にいる女の子はこちらへと歩みを進めてきた。
年の頃は十六、七歳ぐらいだろうか、少女は聖画にかかれた天使の様に整った可憐な顔立ちを持ち、柔らかなミディアムの金髪、青く清らかな瞳が特徴的でシルクのようにきめ細やかな肌と清楚で柔和な気質を持ち、儚げな印象を与えつつもどこか芯の強さを持った容姿をしている。
少女はどこか酷く怯えているようだった。まるで周りを捕食者に囲まれてしまったような小動物のように怯えている様子は見ているこっちも不安になってくる。
「失礼します……」
蚊が鳴くような声で少女はそう言うと春子の隣に座る。啓人は彼女の姿に見覚えがあった。昨日、夜の公園で目が合った少女はまさしく、目の前にいる少女に間違いないからだ。
「君は――」
少女と目が合う。少女も昨日、啓人と会ったことを覚えていたのか、二人の間で居心地悪さが生じる。
部屋の中には耳が痛いほどの静寂が生じていた。
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