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◇
神様――――このやる気のなさそうな人が……?
呆然とする私をよそに、『やる気のない神様』は空中で足を組むと、私に尋ねた。
「やることは簡単だ。俺の'担当'の望む縁を期限内に結べばいいだけ。無理にとは言わない。どうする?」
選択を迫られ、私は両腕を握り締めるときゅっと唇を噛み締めた。
死にたくない――――。
漠然とそう思うのはなぜなんだろう。自分が誰なのかさえ、はっきりとわからないのに。
だけど、このままここでただ泣いていても、どうしようもない。
このやる気のない神様の話が本当なら、今、私を助けることができるのは私だけなんだ。
「……その縁を結べたら、本当に元に戻れる?」
私が恐る恐る出した小さな声に、やる気のない神様は微笑みながら頷く。
「契約しよう、ここに手を」
やる気のない神様は、左手を私に差し出す。
差し出された手に、ゆっくりと右手を伸ばした私は驚く。
手を重ねた瞬間、やる気のない神様が勢いよく私の手を引いたからだ。
その勢いで、私は前方にバランスを崩したまま倒れていく。
「え!?」
何が起こっているのか理解できなかった。
バランスを崩し、勢いよく倒れかけている私の目の前の空間に真っ暗な狭間が広がり、私は狭間に飲まれていく。
『あっ、やべ。言い忘れてた』
何も見えない暗闇の中、やる気のない神様の呑気な声が響いてくる。
『縁を結ぶ相手は、花びらみたいな――――』
やる気のない神様の声が途中で途切れ、私はバランスを崩した勢いのまま硬い場所に、全身をぶつけるようにして倒れ込んだ。
普通なら痛みを感じるはずなのに、不思議なことに体は全く痛くなかった。
私は、飛び起きるように上半身を起こし、辺を見渡した。
「……ここ、どこ?」
さっきまでやる気のない神様と話していた何もない真っ白な部屋ではない。
ベッドや机、本棚が置かれた生活感のある見覚えのない部屋に、私はいた。
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