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 そう思った私は、音のした場所へ行こうと部屋のドアへ向かった。  ドアノブを握ろうとしてみるも掴めず、代わりにスッと手がドアをすり抜ける。驚きつつも、そのまま体ごとドアをすり抜けてみる。  痛みも感触もなにも感じず、私はするりとドアを通り抜け、廊下に立っていた。  物理的におかしなことを体験している自分が、信じられない。    廊下に出た私は自分の体に戸惑いつつも、階段を降り物音のした下の部屋へ向かった。  『俺の'担当'の望む縁を期限内に結べばいいだけ』と、やるきのない神様は言ったけど、肝心なことは何もきけていない。  担当がどんな人なのかも、縁を結ぶ相手が『花びらみたいな――――』なんなのか。  私は、真下の部屋のドアの前に立った。  さっきと同じように上手くドアをすり抜けれるだろうか――――と、部屋に入ることを躊躇していると、今度はドア越しに呻くような低い微かな声が聞こえてきた。    何――――……? やる気のない神様じゃないの?  幽霊なのに、まだ仮だからだろうか。それとも幽霊も心臓の音がするものなのか。  私の心拍数はどんどんとあがり、冷や汗が出てくる。  いや、もう私は死にかけているんだ。怖いものなんてない。  そんな風に自分に言い聞かせ、私は思い切って呻き声が聞こえるその部屋へ飛び込むようにしてドアをすり抜けた。
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