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宮本先生はそう言いながら席を立ち、窓から差し込む眩しい朝日の光をブラインドの紐をひき調整する。
「どういう知り合いか……なんて立ち入った事を訊いても?」
私は立ち上がった宮本先生を見上げた。
父は私宛のメモ紙を宮本先生から貰った事を隠していた。
メモ紙を返して欲しいと言えば、同じようにどういう知り合いなのかと聞かれるだろう。
黒猫を追いかけて死神屋敷の階段へ言った話をしたときの家族の様子を思い出す。
正直に話したところで、信じてもらえるわけない……。
「……それは」
私は俯いた。
「言えないような知り合いですか?」
宮本先生の穏やかな口調に、不信感が潜んだ。
黙り込んだ私のテーブルを挟んだ椅子に、宮本先生は再び座る。
「わかっているとは思いますが、優しいフリをしたむごい人間もたくさんいます」
むごい?
私は顔を上げた。
「そんな人じゃないっ」
顔を上げると、宮本先生の茶色い瞳が諭すように私をみつめている。
「私を訪ねてきた人が添島くんなら――……、先生の思っているような人じゃない」
力が入る両手をキュッと握る。
「大事な人なんです。どうしても会いたい人なんです」
私は頭を下げた。
「お願いです。知っていることを教えてくださいっ」
宮本先生はすぐに返答せず、数秒の沈黙し、ポツリと言った。
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