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「…………同じことを言うんですね」
宮本先生の言葉に、私は顔を少し上げる。
「あの青年も、同じような事を言って僕に頭をさげました」
宮本先生は、困ったように鼻を触る。
「生徒に頭を下げさせるなんて、駄目ですね」
フッと笑うと、宮本先生は言った。
「――丘の上の洋館が死神屋敷と呼ばれている理由はご存知ですか?」
私は躊躇いがちに頷く。
「僕が小さい頃から、言い伝えがありました。あの洋館には死神が住んでいて、死の近くにいる人間は、その見えない姿が見える。目が合えば、死神に魅入られてしまう――」
「……死神」
「まあ、あの長階段が危ないから、子供に近寄らせないために昔からそう言っていたんでしょうけど」
宮本先生は、朗らかに笑った。
「良かったです。どうやら、死神に魅入られているわけではなさそうだ」
そう言って、宮本先生は唐突に私に尋ねた。
「石橋さんは、あだ名はありますか?」
「あ、あだ名ですか?」
宮本先生の唐突な言葉に戸惑いながら私は答えた。
「……落花って昔……」
悲しいことに直ぐに浮かんだのは、落ちた花――落ちた人間、という意味で蔑むように呼ばれたあだ名。
変なあだ名に同情されると思ったが、返ってきた言葉は意外なものだった。
「ああ、『桜の花びら』ですね」
予想にしなかった言葉に、私は目を見開く。
「でも、違いますね」
「……え?」
「『ユウ』と口走っていましたよ」
ユウ――――
そう何度も呼ばれた添島くんの声が、頭の中で反芻する。
「連絡先までは覚えていませんが、××大学の学生だということは確かです。学校に訪ねて来た、”添島肇”くんはね」
宮本先生は、少し申し訳なさそうに微笑むと、本当は知っていた名前を私に告げた。
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