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◇ 「……心筋梗塞?」  救命病棟の待合室で待っていた私たちの元に来た看護師が告げた言葉を少年が復唱する。  私は少年の少し後ろに立って二人の会話を聞いていた。 「ええ。処置で容態は持ち直しましたから、経過をみて後日手術に」 「安心していいってことですか」 「油断はできないけど、今日のところは」  看護師の言葉に、少年はホッとした表情を浮かべる。 「面会できますから、あとで案内しますね。その……、親御さんは?」  看護師は、少年の周りをキョロキョロと見渡した。 「……両親に連絡します。すぐにこれないかもしれないけど」  少年がそう言うと、状況を飲み込んだ看護師は少年の顔をじっとみた。 「顔色が悪いわ。あなたも一人で大変だったわね。点滴でもしてく?」  少年は首を横に振る。 「大丈夫です。それに一人ってわけじゃ……一応」  少年はチラリと私の方に視線を向けた。 「誰か他に?」  看護師は不思議そうな顔をする。 「え?」  バタバタとした足音と共に、若い看護師が待合室の角から姿を現し呼びかける。 「ヘルプお願いします!」  少年に説明をしていた看護師は、その声に慌てて踵を返すと私たちを残して去っていった。  看護師が去ると、少年は張り詰めていた気持ちが緩んだのか、ゆっくりと待合室のソファに腰をかけ、両手を口元に持ってくると深く息を吸い込んだ。  私も同じように安堵していた。  おじいさんは、助かったのだ。 「……良かった」  心から漏れ出るように、言葉が口から出た。  私の言葉に、少年は視線を向ける。 「良くねーよ」  少年は怪訝な顔をした。  
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