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「なあ、日曜日に遊園地に行かない?」  小学六年生の時だった。  掃除の時間に、隣の席だったクラスの人気者の男子から、私はこっそり声をかけられた。 「……ごめん。日曜は図書館に行きたいから」  彼の誘いを私はなんの気なしに断った。  思い返せば、あれが今後の私の明暗を分ける出来事だったのかもしれない。  翌日、教室へ行くと、隣の席の男子の机と私の机は数十センチ離されていた。  私は席に座っている男子にいつも通り「おはよう」と声をかけ、自分の席に座った。  友人と話をしていた男子は、チラリと私の顔をみて大きな声で言った。 「お前ってよくみると、目がでかくて宇宙人みたいだよな」  隣の席の男子と話していた友人がその言葉に吹き出すように笑い、隣の席の男子も嘲るように私を見て笑う。   嫌な空気――――。  その空気はすぐにクラス中に伝染し、その日を境に親の離婚で学校を転校するまで、私はずっとクラス中から冷遇された。  思い知ったのだ。  誰かの目に留まるということは、怖いものだということを。  転校先では、同じ間違いをしない――――。  私はそう誓った。  前髪をつくり、特徴のある目を隠した。  声をひそめ、ひたすら気配を消すように努めるうち、本当に誰にも気にも留められなくなった。   それはたまに寂しくなるけど、傷つけられるよりずっといい。  あれから数年たった16歳の今も、私はそうやってユーレイみたいに生きていた。
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