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 その日は雨が降っていた。    学校を出てすぐ降り出した雨は、折りたたみ傘では心もとないほど強まって、私は早く家に帰るため近道を通ろうと通学路とは違う路地の角を曲がった。    その時、ドンッと何かがぶつかるような鈍い音が聞こえ、音の先に視線を向けた。  水しぶきをあげて通過していく車の影から黒猫が向かいの道に倒れているのが見えた。 「え……」  倒れていた黒猫はヨロヨロと立ち上がると、足を引きずるようにして歩き出す。  黒猫の傍の水たまりが赤く血で滲んでいる。  ひどい怪我かもしれない――――。  そう思った時には、もう足が動いていた。  私は黒猫の後を追いかけていた。  黒猫は足を引きずりながらも道をかけていき、中々追いつけない。  強く打ち付ける雨で視界が悪い。  坂を下っていったところで見失い、私は足を止めた。 「ここ……」  普段はこない場所だった。  煉瓦の長階段が続く丘の前に私は来ていた。  長階段の上を見上げて、少しゾッとする。  以前教室で華やかな女子グループ達が話していた『死神屋敷』が長階段の上にあることを知っていたからだ。  その感じた恐怖は一瞬で弾けた。  長階段の上の方に、力尽きて倒れている黒猫が目に入ったからだ。  私は長階段を蹴るようにして登っていった。
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