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彼の親から電話をもらって駆けつけた時、彼はすでに手術室の中だった。居眠り運転の車にはねられたらしい。頭部に損傷があり、脳内出血しているという。
彼の実家は遠方で、家族がどんなに急いでも到着するまで三時間以上はかかる。今、この場で彼の無事を祈っているのは、彼女一人きりであった。
「どうしてこんなことに」
彼女は泣き腫らした目で手術室の扉を見る。
ブブー ブブー ブブー
いきなりバッグの中から振動が響き、慌ててスマホを取り出して見たが、着信も何も来ていなかった。
「そういえば……」
彼女はあの傷だらけのスマホのことを思い出し、もう一度バッグを探る。案の定、ソレは底の方で赤いランプを点滅させていた。
「どうしよう」
少し考えてから手に取り、電源ボタンを押してみる。明るくなった画面にメッセージ通知が現れた。どうやらロックはされていないらしい。
「やだ、なにこれ!」
彼女は通知を目にした瞬間、思わずスマホを放り出した。
軽い音を立てて床に落ちたソレには、なぜか彼女宛あてのメッセージタイトルが表示されていた。見間違いか、たまたま持ち主が同姓同名なのかとも思ったが、拾って確認する気にはなれなかった。
薄気味悪さを感じ、彼女は足先でそっと反対側の椅子のほうへ蹴る。
そのとき、手術室へ続く扉が開いて看護師が出てきた。
「ご家族の方、いらっしゃいますか?」
看護師の表情から彼の容態を察し、彼女は両手で口を覆う。
看護師は彼女を痛ましそうな目で見ながらも、冷静な態度で医師の元へ案内した。
ソレは長椅子の下に転がったまま、画面を赤く変化させる……
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