【 8 】

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 口づけの合間に蒼馬が喘ぐように言う。だめ、だめと白縫もそれに返しながらも、押し返していた手は蒼馬の胸元にしがみついている。呼吸さえも寄越せと言いたげな口づけに、頭の中がじんと痺れた。 「なぜ逆らおうとする。本当は俺にこうされることを望んでいたんだろう?」 「違う……、あっ」  片方の衿を胸元までぐいと押し下げられ、いきなりのそれに白縫は小さく声を上げた。 「お前に触れると俺はおかしくなる。酷くしてでも言うことを聞かせたくなる」  いつも酷いことをしているくせに、独占欲を剥き出しにして蒼馬が言う。こんな男の言いなりになるのはまっぴらだ。なのに、自分はどうして好きにさせているのだろう。  蒼馬は何度も何度も白縫の唇を吸った後、頬から首へ。そのまま唇を這わせながら、首のつけ根へと滑らせる。そうして柔らかい肩の肉を噛みつくように、きつく吸い上げた。 「あぁ……っ」  痛いようなそれに、白縫はひどく感じた。されるがまま、動けずにいると、更にぐいと衿を引きずり下ろされ、露わになった乳首をきゅっと摘ままれた。 「やぁ……っ」  力なく声が漏れ出たのと同時に、後ろの木戸がぎぎっと開いた。何も知らず顔を覗かせた家臣が目を丸くして、呆然としている。  白縫は反射的に蒼馬から体を離すと、はだけた衿を元に戻し、一目散に駆け出した。後ろで蒼馬が「待たぬか」と叫ぶが無視だ。  白縫は立ち止まることなく、文字通り逃げるように天守閣の階段を駆け上がる。途中、すれ違う家臣や侍女達に「いかがなされました」とひっくり返る声で問われたが、返す言葉もなく駆け抜けた。  部屋の前ですれ違った多岐にも無視して、襖をぴしゃりと閉める。廊下から、やはり心配そうに問われるが、何があったかなんてとてもではないが言えない。 「一人に、して……」  震えるその声に、多岐は何かを察したのか、部屋の前からそっと離れた。力が抜けたように、白縫はその場に座り込んだ。
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