248人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
口づけの合間に蒼馬が喘ぐように言う。だめ、だめと白縫もそれに返しながらも、押し返していた手は蒼馬の胸元にしがみついている。呼吸さえも寄越せと言いたげな口づけに、頭の中がじんと痺れた。
「なぜ逆らおうとする。本当は俺にこうされることを望んでいたんだろう?」
「違う……、あっ」
片方の衿を胸元までぐいと押し下げられ、いきなりのそれに白縫は小さく声を上げた。
「お前に触れると俺はおかしくなる。酷くしてでも言うことを聞かせたくなる」
いつも酷いことをしているくせに、独占欲を剥き出しにして蒼馬が言う。こんな男の言いなりになるのはまっぴらだ。なのに、自分はどうして好きにさせているのだろう。
蒼馬は何度も何度も白縫の唇を吸った後、頬から首へ。そのまま唇を這わせながら、首のつけ根へと滑らせる。そうして柔らかい肩の肉を噛みつくように、きつく吸い上げた。
「あぁ……っ」
痛いようなそれに、白縫はひどく感じた。されるがまま、動けずにいると、更にぐいと衿を引きずり下ろされ、露わになった乳首をきゅっと摘ままれた。
「やぁ……っ」
力なく声が漏れ出たのと同時に、後ろの木戸がぎぎっと開いた。何も知らず顔を覗かせた家臣が目を丸くして、呆然としている。
白縫は反射的に蒼馬から体を離すと、はだけた衿を元に戻し、一目散に駆け出した。後ろで蒼馬が「待たぬか」と叫ぶが無視だ。
白縫は立ち止まることなく、文字通り逃げるように天守閣の階段を駆け上がる。途中、すれ違う家臣や侍女達に「いかがなされました」とひっくり返る声で問われたが、返す言葉もなく駆け抜けた。
部屋の前ですれ違った多岐にも無視して、襖をぴしゃりと閉める。廊下から、やはり心配そうに問われるが、何があったかなんてとてもではないが言えない。
「一人に、して……」
震えるその声に、多岐は何かを察したのか、部屋の前からそっと離れた。力が抜けたように、白縫はその場に座り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!