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因みに、敵に狩られたとしても、命を取られるワケじゃない。
金を取られるのだ。
「くそっ、どれだけ入れてると思って!」
………………
もうお分かりだろうが、戦場とはパチンコ屋の事。
そして俺はスロット専門の遊び人。
好んで打つ台は「モンタンハンター2」と呼ばれる物で、大当たりすると画面上のモンスターとバトルになり、敵に勝てれば継続して大当たりが続き、大量出玉を獲得出来る……といった仕様である。
「出やがったな、クムペッコめ!」
敵にも強弱があり、倒した際に得られる出玉も違って、ゲーム感覚で楽しめ、とても良く出来ていると自他共に認められし神スロット台。
いつしか俺はどっぷりとのめり込み、毎日毎日仕事が終わり次第、意気揚々と戦いに来ていたのだが…………
「グエエッ」
「なんで攻撃しないんだよ!」
リアルに戦いを妄想しながら、基本一人で打つのが好きなのだが、とにかく負けまくり。
ベル(払い出し)が成立すると攻撃チャンスなのに、七回続けても棒立ちしている主人公キャラに憤りさえ覚えた。
「くっ…………」
二万入れて掴んだ大当たりは、僅か一回で終了。
最愛のキャバ嬢に貢ぐだけ貢いで、手も握って貰えなかった気分になる。
『ぷっ、アイツまた負けてるわよ?』
『人生でもスロットでも負け組、あぁは成りたくないよな?』
反対側に座ってるバカップルが、ヒソヒソと小声で会話している。
パチンコ屋はとても騒々しい場所だが、意外と良く聴こえるモノさ。
(クソったれ、不細工女連れて呑気にデートしてんじゃねぇぞ)
バジリスト・タイムとか一発で入るなよ!
何の事かは置いといて、バカにされてるのが解り、益々ムキになる。
アカン、これダメなパターンだと自分でも解っていたのに、どうしても引き下がれなかった。
…………………
「なんで強レア引いて単体攻撃のみなんだよ!?」
スロットの内容はさておき。
常連客では名の知れたハンターでも、実際は引き弱男爵と揶揄される始末。
今月の家賃支払い、どうしよう?
「おっ、今日も来てるのか」
「あ、アンタはっ!」
そんな俺の隣に、同じ常連で神と呼ばれる男が腰を降ろした。
「仕方ない、パーティー組んでやるよ」
「ま、マジで!?」
………………
コイツは三十代半ばのイケメン。
不細工で可哀想な俺に同情してくれたのか、なんと力を貸してくれるという。
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