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「ああ、こんなことって……
私、チャコジャイの時、神様にお願いしたの。
人間に生まれ変わってヤマトとまた会えますようにって……
その時、神様の声が聞こえたわ。
願いを叶えてやる。互いの名を知った時、前世の記憶が甦るだろうって。
願いは一度きりだって」
「そうか、チャコが祈ってくれたのか。そして、遂に人間に生まれ変われたんだな」
「ヤマト……でも……」
「こうして会話が出来るだけでも奇跡だ。俺はこのままで十分だ」
「でも、わたし……」
美しい瞳に迷いが浮かぶ。
絹のドレスに垂れた茶色い髪と象牙色の肌が震え、バラ色の頬と唇が喘いでいる。
「神様は願いを叶えてくれたんだ。さあ、チャコ」
俺は逞しい胸板を見せつけるように手を差し伸べた。
「待って、ヤマト……」
チャコは後ろに隠した手をピクリと動かした。
まさか……
お嬢様然としたチャコは俺の風貌が気に入らないのだろうか?
「チャコ、どうしたんだ?俺たちは愛を誓い合った。そうだな?」
「そうよ。でも……」
チャコが大きく息をし、肩に力を入れたのが分かった。
躊躇う女には言葉よりも行動で示せと言う。
俺は真っすぐチャコの胸に飛び込んだ。
「いやあ~~~~~」
チャコは力いっぱい腕を振り下ろした。
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床に転がるピンク色のハエ叩き。
「許して……ヤマト」
チャコは泣きながら俺の身体を新聞紙に包んでゴミ箱へ捨てた。
「今度こそ人間に生まれ変わってね、信じてるから。
私、いつまでも待つわ」
了
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