第3章 それからのヤマト

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「ああ、こんなことって…… 私、チャコジャイの時、神様にお願いしたの。 人間に生まれ変わってヤマトとまた会えますようにって…… その時、神様の声が聞こえたわ。 願いを叶えてやる。互いの名を知った時、前世の記憶が甦るだろうって。 願いは一度きりだって」 「そうか、チャコが祈ってくれたのか。そして、遂に人間に生まれ変われたんだな」 「ヤマト……でも……」 「こうして会話が出来るだけでも奇跡だ。俺はこのままで十分だ」 「でも、わたし……」 美しい瞳に迷いが浮かぶ。 絹のドレスに垂れた茶色い髪と象牙色の肌が震え、バラ色の頬と唇が喘いでいる。 「神様は願いを叶えてくれたんだ。さあ、チャコ」 俺は逞しい胸板を見せつけるように手を差し伸べた。 「待って、ヤマト……」 チャコは後ろに隠した手をピクリと動かした。 まさか…… お嬢様然としたチャコは俺の風貌が気に入らないのだろうか? 「チャコ、どうしたんだ?俺たちは愛を誓い合った。そうだな?」 「そうよ。でも……」 チャコが大きく息をし、肩に力を入れたのが分かった。 躊躇う女には言葉よりも行動で示せと言う。 俺は真っすぐチャコの胸に飛び込んだ。 「いやあ~~~~~」 チャコは力いっぱい腕を振り下ろした。 *************************** 床に転がるピンク色のハエ叩き。 「許して……ヤマト」 チャコは泣きながら俺の身体を新聞紙に包んでゴミ箱へ捨てた。 「今度こそ人間に生まれ変わってね、信じてるから。 私、いつまでも待つわ」 了
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