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第4章 もう一度ヤマト~100年の愛
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キンモクセイの葉が緩い風に誘われ窓を奏でる音が微かに流れてくる。
すぐそこまで夏は来ているのか
日は落ちても気温は、さほど下がらない。
闇稼業には十分な暗さだ。
いつもより早いが、感慨にふけっている暇はない。
「よし、行くか」
ヤマトは呟いた。
「ヤマト、今日はよさないか、何かがある予感がする」
親友のワモンが後ろから肩を掴んだ。
「離せよ。その何かを求めて行くのさ」
温かい手を振り払い、外へ飛び出す。
「気を付けろよ」
ワモンのセリフが追いかけて来る。
デシャブ……
いや、何でもない。
目的地へ向かうハンターの前をキラリ輝く茶が過ぎる。
ふわりと良い香り。
「おい、そこの茶髪の子……茶…こ……チャコ!?」
「何よ、そういうあなたはヤマト……ヤマト!?」
時が止まり、一陣の風が吹き抜ける。
「「なぜ……?」」
初めて会ったはずなのに、懐かしさに胸が締め付けられる。
双方の脳裏に愛の歴史が走馬灯のように蘇る。
「ヤマト……初めて出会ったあの時から……」
「チャコ……ふたりの愛を引き裂かれ、俺は神に祈った。生まれ変わってまた君と会いたいと」
「私たちは何度も生まれ変わり、出会っては分かれを繰り返してきたわ」
「再会し、互いの名を呼べば前世を思い出すと言う神の願いはひとり一回のはずなのに……
奇跡だ、チャコ……会いたかった、今度こそ離さない」
黒く大きな手を差し伸べる。
「待って……言ったでしょ?お互い理想の姿で出会いましょうって。今の私は誰からも嫌われ……」
チャコはしかし、逸らそうとした瞳を強い目力で射抜かれた。
「例え……世界中の人間が君を憎もうと俺の心は変わらない」
真実を語る男の背中が黒く光る。
「ダメよ、上手くいくわけない。だって……私はあなたを何度も……」
過去の裏切りを恥じる女の語尾は消え入るように闇に散る。
「昔のことは忘れた。
どんな容姿でも君を愛してる。
ふたりで明るく賑やかな家庭を築こう」
愛に満ちた眼差しは、頑なな心をじわじわと溶かした。
「ヤマト…あなたに付いて行く……もう離さないで」
細く頼りない肩をヤマトは逞しい胸に引き寄せた。
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