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綺月が彼等を理解に至る程、強烈に興味を惹かれる何かに出会うか。
彼等が綺月の抱える空虚を正しく理解するか。或いは綺月に飽き、煩く纏わり付くのを止めるか。
そうでもしなければ、双方の間に生じている差異は縮まる事も無いのであろう。
何か理解に及べればと、綺月側は微塵も思っていない、というワケではなかった。しかし今更十数年で綺麗に根付いてしまった己の価値観を、根底から引っ繰り返す事は容易ではない。少なくとも自力では不可能だろう。
圧倒的な迄の衝撃、或いは其れに準ずる感情の動きが必須。しかし綺月をクールと評するのは大きく検討を外しているワケでもなく、殆ど全部を冷静に受け止め、脳内だけで理解に及んでしまう自己完結型此処に極まりな綺月にとって、其れ程の衝撃を受ける外的要因等望むべくもない。
では如何するか。如何にもならない。
如何にもならないというのは、双方の距離が一向に埋まらず、寧ろ開き続けると同義にもなるが、少なくとも綺月は其れで困窮する事もない。彼等の言動について理解及ばぬのは少々消化不良的な部分もあるが、多少小骨が刺さった程度の不和であり、放っておけば即座に解消されるだろう。忘却という形によって。
そう思っていた綺月に。
しかし、想像以上に早く。否、想像さえしていなかった事に。
転機は、唐突に訪れた。
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