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けたたましい着信音に、夜中、たたき起こされた。よりにもよって、午前2時に。
そういえば、適切な設定を忘れていたな。
電話主は……荒垣だ。
「やべえよ、助けて」
突然の第一声。
毛布で温められていたばかりの背筋に、悪寒が走った。
そして夢ではないかと疑った。彼のこんな声は、聞いたことがない。
「どうしたの、荒垣……」
「俺のタイムライン、見て……」
慌てて、僕は枕もとのパソコンのスリープを解除した。
我悟空@gakintyo
やっ と みつけ た
我悟空@gakintyo
ぼ く といっ しょ に
さびに まみれ て くれるよ ね
我悟空@gakintyo
こっち に き て くれ るよ ね
投稿されたのは……ほとんどつい先ほど。
「荒垣、お前、何これ……」
「俺じゃないんだ、勝手に、勝手に書き込まれていくんだ……」
「そんな」
寝起きなど関係ない。僕は動揺しながら、なんとか彼をなだめようとする。「なんかまた、変なアカウントと連携しちゃったんじゃないの……? ほら、レイなんとかのグラサン、みたいなさ」
自分でもはっきりわかるほど奇妙に歪んだ口元から、必死で冗談を搾り出す。
「冗談なんかじゃない!」絶叫。その声はもはや、裏返っていた。「俺じゃないんだよ! 勝手に、勝手に……かきこまれていくんだよ!」
「にしてもさ!」僕も思わず声を張り上げていた。「落ち着けよ! 不気味ではあるけど、所詮は単なる書き込みだ! お前に実害があるわけじゃあ――」
「違うんだよ」
ぽつりとした絶望の一声。
沈黙――電話口から、空虚な小さいノイズ音が続く。
「いる」
「え」
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