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「……ありがとな……愛してる」
たったそれだけの短い言葉ではあったが、その声があまりにも幸せに満ち溢れているように聞こえて、アザミの能力を知っているヒドウは胸が締め付けられた。
今夜最初にキスをした後の、
「ヒドウの気持ちがあんまり嬉しかったから……なんだか怖くなっちまって」
という言葉が思い出される。
そんな本当の愛には不慣れなアザミからの愛の言葉。
自分と共にいることをアザミが幸せと感じてくれることが、自分にとっての幸せでもあるとヒドウは心から思えた。
存在を知った以上、辞めることも逃亡することも叶わない非合法チーム「96」。
ヒドウは上官であるアザミが自分の愛に応えてくれたことで、逆に彼の任務に支障をきたさないだろうかという一抹の不安も覚えていた。
しかし今、自分を抱き締めてくれている誰よりも大切な存在を、手離すつもりはまったくなかった。
もし今後、邪魔するものがあれば、自分の手で闇へ排除すればいいだけのことだ。
すでに法の届かないアンダーグラウンドで生きる男となったヒドウは、美しい瞳に暗い炎を隠しながら優しくアザミを抱き締め返したのであった。
96・アザミ班【1.5】/完
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