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 某県の湖畔に佇む高級ホテルK。  荘厳な美しさを感じさせる建造物だというだけではなく、質の高いサービスと安全性から海外から来日したスターやセレブ、VIPなどが常宿として利用するということでも知られている。  30階はスイートルーム専用の特別フロアとなっており、その豪華な一室に二人の「96・アザミ班」メンバーがいた。  室内でひっそりと時を刻む飴色をしたアンティークな掛け時計の針が、午後11時をさそうとしている。  美しく装飾された大きなソファに押し倒されたアザミは、唇が離れるのと同時にヒドウの次のキスを手で制した。 「ちょ、ちょっと待ってくれよ」 「……どうしました?」 「その……本当に、フェロモンの影響じゃないんだよな?」  自分の気持ちを受け止めてくれたと思っていた相手から思わぬ言葉が出たことで、ヒドウは戸惑った。  そして覆いかぶさっていたアザミの上からゆっくりと降りると、姿勢を正して寂し気に質問する。 「……班長は、自分の気の迷いだと思っておられるのですか?」  ヒドウの声から明らかに傷ついた気持ちが伝わってきて、アザミはソファに座り直すと乱れた髪をかき上げた。
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