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「……悪かった。オメェは何も悪くない。ヒドウの気持ちが嬉しくて。あんまり嬉しかったから……なんだか怖くなっちまって」  「!」  班長は嬉しいと言った。  自分の気持ちを嬉しいと受け止めてくれていたんだ。  それなのに嬉しいから怖くなったなんて、どうして……?  ヒドウはアザミの隣りに静かに座った。  その状況は、茶色いレンガのショッピングモールの海に向かって設置されていたベンチを思い出させた。  そして、あの時アザミが自分にしてくれたように、今度はヒドウがアザミを落ち着かせようと肩に腕を回して抱き寄せる。 「俺の場合は、よく分からなくなっちまってさ。自分がいくら相手に惚れたとしても相手も自分のことを愛してくれているのか、ただフェロモンに反応しちまっているのか」  自嘲めいた言葉と寂し気な笑顔で、ヒドウは察した。  自分と同じではないとしても、班長も愛に大きく裏切られたことのある人なのかも知れない。  遊び人として楽しく生きているのではなく、そう生きるしかなかったというような……自分の推測でしかないけれど。
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