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「口裂け女」の正体については他にも精神病棟から抜け出した女性であるとか、飛騨のバス転落事故で亡くなった女性の亡霊であるとかいろいろ言われているが、いずれにしても中京地域、特に岐阜県周辺がその発生源であり、現在、夏季限定で「口裂け女」をテーマにしたお化け屋敷の行われている岐阜市の柳瀬商店街などもその流れである。
…………ところがだ。
この都市伝説起源の常識を疑うような話を、私は今は亡き祖父より聞いたことがある。
どんな脈絡の中で語られたものなのか憶えてはいないが、確実に「口裂け女」とは無関係の話の中で、
「子供の頃、地元(長野県松本市)に〝キリサキオンナ〟がやって来ると言って騒ぎになった」
と聞かされたのだ。
〝キリサキオンナ〟とは、おそらく「切り裂き女」と書くのであろう。
微妙に名称はことなるが「口裂け女」と無関係な話とはとても思えない。
大正6(1917)年生まれの祖父が子供の頃というと、小学生か中学生ぐらいまでとして1920年代になる。
明らかに1979年のブームよりも前の話だ。
となると、もっと昔にその原型となる都市伝説があったのだろうか?
今となってはもうそれ以上、詳しいことはわからない。
その時はそれだけで話は終ったが、「またいつか聞けばいいや……」と思っている内に祖父は亡くなってしまい、ちゃんと聞き取り調査をしておかなかったことが大変悔やまれる。
しかし、それに疑問を感じてちょっと調べてみると、やはり1978年以前にも「口裂け女」の原型を思わす話がいくつか存在する。
例えば明治の中頃、滋賀県信楽に住む「おつや」いう女性が、深夜、山を越えて恋人に会いに行く際、女の山道は物騒なので、白装束に白粉を塗り、髪を乱して蝋燭を立て、三日月型に切った人参を口に咥え、手には鎌を持って峠を越えたという話があるし、同様に岐阜県でも、明治もしくは大正時代の同様の話が伝わっている。
また、韓国においても2004年に「口裂け女」ブームが起こっているが、これも日本統治時代、すでにその噂話が聞かれていたとする話もある。
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