206人が本棚に入れています
本棚に追加
思い出していたら頬が緩んできた。
やばい、何度も言うがここは電車の中なのだ。
きりっと表情を引き締め、携帯をカバンの中に入れた。
もうすぐ降りる駅。
すごく眠いがここで寝てしまったら確実に寝過ごしてしまう。
背筋をピンと立て、日が落ちてしまった窓の外を眺めた。
世間はもうすぐクリスマス。
佳波さんと3度目のクリスマス。
付き合って初めてむかえるクリスマス。
どこに行こうか、何をプレゼントしようか、家で過ごすのもいいよね。
考えるだけでわくわくする。
止まった電車を降りて歩き慣れた道を歩く。
周りを見ても誰もいない。
まるで真っ暗な世界に1人取り残されたような気がして、急に心細くなった。
冷たい空気の中1人。
覚えず早足になった。
かつかつとかかとが鳴る。
昔から暗いのは苦手だ。1人だとなおさら。
もう大人なのに。
私はため息を落とした。
少し歩くと目的地に到着した。
佳波さんが住んでいるマンション。
半年ほど前にもらった合鍵で中に入ると途端にほっとして、玄関に座り込んでしまった。
早く佳波さんに会いたいなぁ……。
なんて考えるが、寒さに耐えきれなくなって立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!