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「あー……うん、彼氏はいない、よ」
あきらちゃんの問いに少しぎごちなくも答えた。
やっぱり付き合うなら男の人だもんね。
当たり前だよね。
分かっていても少しだけショック。
「ごめん、傷ついた?」
あきらちゃんは私が彼氏がいないことを気にしていると思ったのか、謝ってきた。
「ううん、大丈夫だよ」
そう当たり障りのない返事をして。
そこからはまた別の話題になって、運ばれてきた料理を食べながらいろいろな話をした。
高校生の時のこと。卒業してからのこと。
もちろん私は佳波さんとのことは話していない。
食べ終わってお会計をしてお店を出たその時だった。
道路を挟んで向こう側の歩道。
「井上先生……?」
あきらちゃんがそう言う。
そう、そこにいたのは佳波さんだった。
男の人と一緒に楽しそうに笑っている。
男の人は佳波さんの肩を抱いて。
なんで?誰?
なんで肩なんて抱いているの?
その人は私の彼女、なんだよ。
もやもやぐるぐる。
心の中がよく分からなくなって、ただその場に立ち尽くした。
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