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仕事が終わって電車の中。時計を見ると、針は既に6時半を指していた。
『仕事お疲れ様です。今から家に行ってもいいですか?』
メールをするとすぐに返事が返ってきた。
『ごめん、今日はいつもより遅くなるかも。それでも良かったら待ってて』
忙しい中でメールを打つ姿が想像できる。
なんだか顔がニヤけちゃいそうだ。
だけど電車の中だからぐっとこらえて返信をする。
『はい、待ってます。頑張ってください』
かつて私が先生と呼んでいた人、佳波さんは今も同じ学校で先生をしている。
私が卒業してから3年。
あの頃はまだ片想いだった。
卒業してからも会ってはいたけど、付き合ってはいなかった。
その関係が変わったのは1年くらい前。
私の成人式の日だった。
その日は佳波さんの仕事が終わって一緒にご飯を食べに行った。
その時、佳波さんが突然言ったのだ。
「亜夜のことが好きになったの。だから私と付き合ってくれない?」
私はすごく驚いて、それ以上に嬉しくて泣いてしまった。
そしたら佳波さんは苦笑しながら私の涙を拭ってくれて。
今でも忘れられない。あの時のこと。
佳波さんの言葉、表情。
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