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「ただいまー」
「おかえりなさい。遅かったじゃない? 何してたの?」
リビングの扉をあけると、台所からお母さんが顔を出した。
「またコーちゃんと相撲してたの?」
「うん、まぁね」
おじさんの事は、なんか隠しておいた方が良い気がしたので黙っていた。
「砂まみれだから、そのままお父さんと一緒におふろに入ってきちゃいなさい」
「お父さん、早番?」
「そうよ。」
「やった!」
僕はランドセルを机の上に放り投げるとおふろへ急いだ。
「体を洗ってから湯船に入るのよ。じゃないと、湯船が砂まみれになっちゃうから」
急いで服を脱いで洗濯機の中に入れると、おふろの扉をノックした。
「入るよ!」
「いいよ」
扉を開けると、お父さんは湯船につかっていた。僕がバスマットで体育座りをすると、手桶で頭からお湯をかけた。
「遅かったな。今日は、コーちゃんに勝てたか?」
「いや、ダメだったよ」
「それにしては、なんか嬉しそうじゃないか?」
「まあね」
「なにかコツでもつかんだのか? ん? エージ、髪の毛になんかついてるぞ」
お父さんが髪の毛から、緑色のモノをつまんだ。
「こりゃ、藻だな。なんで頭に藻がついてるんだ?」
髪の毛についていたのは、おじさんの体の藻だった。
おじさんのことは、お父さんにも話しちゃいけない。おじさんは良い人だけど、見た目が気持ち悪いし、少しだけ生臭い。あんなおじさんに相撲を教わろうとしていることが分かったら、お父さんもお母さんも心配するに決まっている。
「なんか、隠し事をしてるな?」
「し、してないよ!」
深刻な顔をしているぼくを見て、お父さんは少し笑った。
「お母さんには内緒にしておいてあげるから、お父さんには話してごらん」
「お父さん、男の約束できる?」
「もちろん」
「ぜったい、誰にも言っちゃダメだよ」
「よし、誰にも言わない。そうと決まれば、まずは頭と体を洗っちゃおう」
急いで頭と体を洗うと、お父さんが入っている湯船に飛び込んだ。
「それじゃあ、話しを聞かせてもらおうか」
湯船の中で、お父さんはひそひそ声でいった。僕もひそひそ声で、おじさんのことを話した。
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