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「隆哉…私を見て」
黒い何かに引きずられ深い深い闇へ沈んで行きそうになる彼を伊織が引き上げてくれる。
「伊織…」
「私は何処にも行かないよ。貴方の隣にちゃんといるから」
隆哉の闇を晴らすようにはっきりと彼女は言葉にしてくれる。
彼女の言葉と彼女自身は俺の闇を少しずつ浄化してくれている。
でもどんどん沸き上がる黒にいつか彼女すらも飲み込んでしまう気がして。
そうなる前に……弱い心は容易に逃げたがる。彼女を遠ざけたとしても何の意味もない。わかってる。
伊織に一度だけ離れようと言った事がある。感情の起伏に乏しい彼女がその時ばかりは唯一本気で隆哉に怒ったのだ。
彼は平手まで食らった。思い出しただけで頬がヒリヒリと痛む気がする。
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