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イライラが溢れるようにハンドルを掴む人差し指のトントンが止まらない。
「早く変われよ…曲がればすぐ家なのに!」
たかだか赤信号一つにこんなにも人相の悪い運転手を見たことがあるだろうか?
まるで大渋滞にぶち当たったレベルでのイライラようだ。しかし彼は既に仕事場でそれ相応のストレスを与えられている。
一つの赤信号でも大渋滞に引っ掛かったのとそう変わりはしないのだ。
片手で首元のネクタイを緩める。少しでもイライラを抑えようとの行動なのだろう。
ようやく信号が青に変わりやっと家に帰れるとアクセルに足をやろうとしたまさにその瞬間。
よぼよぼの老婆が震える手で杖を掲げ横断歩道を渡る真っ最中。
「何故、今渡る?!ばあさん絶対に信号見えてねぇだろ!!?」
彼のハンドルトントンが止まらない。
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