プロット全文

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都心まで二時間ほどかかる、急行の止まらない駅。 そこを中心とした、過疎ではないがにぎわっているともいえない、学校もスーパーも病院も一通りは揃っているが、どれもひとつしかないのを近隣の町で分け合っているような町。 いわゆる地域社会があるような、ないような、微妙な町。 毎朝、近くの公園でラジオ体操をしている爺さん・福岡晃司(73)がいる。会場の行き帰りで出会う人にいちいち大声で挨拶して、自分では地域のボス的立場にいると思っているが、実は近所の人たちの名前も正確に覚えてはおらず、威勢の良さでごまかしているところがあるためひそかに敬遠されている。体操も自分がリーダーになったつもりで、他の出席者と相対する格好で体操しているが、他の人は別に彼の方は見ておらず、覚えている動きを勝手に繰り返しているに過ぎない。 家では晃司の世話はもっぱら妻の牧子がやき、自分では何もしない。 しかし、晃司はやたらプライドが高く、節制を求める牧子の忠告も聞かず、そのくせラジオ体操だけは折り目正しく出席する。     
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