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正直、羨ましいと思った。
すらりとした手足に、メリハリのある身体。整った顔には大きな瞳と、ぷっくらした唇。誰もが彼女を綺麗だと賞賛し、美しいとも可愛いとも言われている。
これで性格が醜悪ならば良かった。彼女は性格すら良かった。男に媚びたりせずサバサバとしているが、男勝りというわけではない。正義感強く、美しく、儚い。
そんな彼女が、羨ましくて堪らない。
「あれ、佐藤さんどうかした?」
具合でも悪いの?と放心状態の私を心配してくれる。何だか眩しくて目がつぶれてしまいそうだ。何でもないよ、と告げるとチョコレートをひとつ、渡してくれた。
女神か。
「疲れた時には甘い物! ほら、今日もあと少しだよ」
ネイルの施された彼女の指は綺麗だ。まっすぐ細長い。ああ、羨ましい。
バリバリ仕事も出来て、見た目もよくて、部下からも上司からも信頼されている――
私とは大違いだ。
いや違う、私だって彼女さえいなければ普通に仕事が出来る人間のはずなのだ。
彼女がいるから、彼女さえいなければ。
――ああ、また嫌な事を考えている。
だから私は醜くなってしまうのだ。
あと1時間、集中して仕事をしよう。
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