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目覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった
「・・・・・・」
ビュウとふく風が俺の髪を撫でる。その風を感じながら、俺は少しだけぼやんやりしている頭を働かせてみた。
ここはどこなんだろう。景色の高さからして、5、6階くらいだろうか。しかし何故自分はこんな所に立っているのだろう。
目に映る街並みをどんなに眺めても答えは出ない。
というかそもそも、今より前の事が思い出せない。これはもしや、記憶喪失というものなのではないだろうか。
とりあえず、俺は自分の体・・・もとい服装を見てみる。
上も下も黒い。靴も黒い。そして手には指先がない手袋をしていた。勿論これも黒。
「どんだけ黒が好きなんだよ」
不意に出た呟きで、自分の声を知る。当然自分の顔も覚えていない為、両手で自分の頬を触ってみるも何もイメージがわかない。
「これからどうすんだ俺・・・」
屋外階段の手すりに腕を乗せ、額をその腕につける。
ため息を一つつき体を反転させて、手すりに背中を合わせた。
「ん?」
反転させた時にジャケットがつれた気がして、自分の胸から下に手を這わせる。
左のポケットに何か入っているのを感じ、その何かを取り出す。
「・・・」
それは手帳。表も裏も何も書いていない、小さな黒い手帳。ここも黒い事に苦笑しながら中を捲ってみる。
【あなたの役目をさがしてください】
捲って早々、一ページ目にこの言葉。次も捲ってみる。その次も、またその次も捲ってみる。どんなに捲ってみても他には何も書かれていない。俺は一ページ目に戻る。
「役目・・・って・・・」
これは自分の字なのか。いや、誰かの字でもしかしたら手の込んだイタズラなのかもしれない。
「それでも・・・この手帳を持っていたってことは・・・」
恐らくこれが、俺が俺を取り戻す唯一の手掛かりだ。と、思う。
だからやってやる。
俺は手帳ごと手をジャケットのポケットに突っ込み、屋外階段を降り始めた。カンカンと響く足音が、このゴールの見えない探し物を見つける旅へのカウントダウンに聞こえてきた。
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