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Tと呼ばれた少女は、面倒くさそうに返事をする。
「嫌だよ。やる気削がれちゃった」
それを聞いて青年は溜め息を吐く。
「そうは言ってもですね。引き受けたからには、
事件を解決まで導くのが探偵の仕事です。
それに……そう言っている間にも時間は経っていますし、逃せば貴方への信頼が失墜しますよ」
「それは困るなぁ……」
全然困らなさそうに転げ回る少女。
暫くそのままでいたが、気が済んだのか暫く経ってから起き上がった。長い金髪が肩から滑り落ちる。
「大体、この漫画の作者が悪いんだ。探偵を死なせるなんて、僕に喧嘩を売っているとしか思えないよ。折角此れから事件の大詰めってところだったのに、萎えるというか、なんというか……」
そして灰色に澄んだ瞳を青年へと向ける。
こてりと首を傾げるその姿は、大変可愛らしいが、それが全て計算尽くである事を知っている青年は、全く動じない。
「そうは思わないかい。伊吹くん」
「いいえ。全く」
青年…伊吹は困り果てる。
こうなったTは動かない。
此方がどれだけ願おうとも、
のらりくらりと躱してしまうのだ。
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