0人が本棚に入れています
本棚に追加
寒空の下、公園のベンチに座っている少女がいる。
直前まで室内の……しかもベッドにいたからか、
薄いネグリジェのようなものしか着ておらず、
素足の細い足は、悲鳴を上げていた。
まだ下がズボンらしきものを履いていた事が、
せめてもの救いだろう。
「痛いよ……」
小さな声で少女が言う。
分からない。何故こうなったのか。
場所も季節も…………
そして何よりも……頼りにしていた無二の付き人が
居なくなっていた事が。
名探偵Tから只の少女に成り果てた。
そう自身で感じていた。
しかし、いつまでもこうしていては、
何も始まらない。
兎に角移動しなくては。
今は一刻も早く、暖かい部屋に入って、
じっくりと考えたい。
こう寒くては、推理力も低下する。
「先ずは交番かな」
恐らくは家出か誘拐かと思われるだろうが、
それで良いとTは立ち上がって、歩き出した。
少なくとも、此処よりはマシな場所な筈だ。
最初のコメントを投稿しよう!