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足だけじゃない。
美香のつやつやした色素の薄い髪。長いのに毛先まできれいで。私の髪はごわごわしていて、とてもじゃないけど伸ばすことができない。伸ばすと陰毛みたいだから。ずっと短くしている。顔だってそう、もう、何も言いたくない、何も言えない、とにかく私は、努力しなくても綺麗な美香が大嫌いだ。
私の気持ちをよそに、美香はアイスをパクパク食べている。チョコにいちごにバニラ。私はチョコミントにバナナにチョコ。アイスなんか食べたくない。これは本音だった。
だけど、私よりもうんと細くてきれいな美香がトリプルを食べているのに。私みたいなデブで不細工がカップのアイスを一段で、なんて頼んだら店員さんや周囲の人はどう思うんだろう。見栄っ張り。デブのくせに。そんなこと絶対に思われたくなかった。
「千代、早く食べなよ、早く食べてどっか行こうよ」
京子に声をかけられて我に返った。
見ると京子も沙紀ももう半分以上アイスを食べ終わってしまっている。私はごめんごめんと曖昧に笑いながらアイスを食べ進める。
「こんなに寒いのに、二人ともよくトリプルなんて食べられるねえ」
京子がふざけたようにふざけたことを言って、わざとらしく首をすぼめてみせた。それに便乗して沙紀も笑う。
美香が「寒いからこそ、でしょ」などとわけのわからないことを言う。
京子が誘わなければ食べなかった。美香がトリプルなんか頼まなければ私だってカップアイスだけにしていた。
私がトリプルのアイスを食べているのは京子のせいだし美香のせいだ。
デブスは人より食べなきゃいけないし、ダイエットなんかしちゃいけないし、きれいになろうと無駄な努力をするだけ見苦しいんだから。だから、美香がよく食べる華奢な美人なせいで、今日も私は太るのだ。
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