1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「逃げ出したい」と言ったのは僕だったって、もちろん覚えている。
けれどもそれが本当にかなうなんてことは、これっぽっちも思っていなかった。
「逃げよう」
そう言ったのは、シンちゃんだった。
そしてシンちゃんは、僕とそれから二人の仲間を誘って旅に出た。
まず、僕たちは駅へ行って、一番遠くの切符を買おうとした。
でもクラスで一番頭の良いサトルくんは、「一番遠くの駅は大きいから、人が多くてきっとすぐに見つかってしまうから、その一つ前にしよう」と言った。
僕たちはみんなその考えに賛成して、言われた通りにした。
電車に乗った時間は、一時間とそれから少し。
でもあの時の僕にとっては、もっとずっと長く感じた。
半分も過ぎると、僕は不安で泣きそうになっていた。
シンちゃんもサトルくんも、いつもより緊張した面持ちだったように思う。
でも、ケンちゃんだけは違った。
「腹減ったー」と騒ぎ出し、シンちゃんの持っていたお菓子を平らげると、呑気な顔して居眠りを始めた。
僕たちはそれを見て、ほんの少し笑った。
最初のコメントを投稿しよう!