覚えていますか?

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「逃げ出したい」と言ったのは僕だったって、もちろん覚えている。 けれどもそれが本当にかなうなんてことは、これっぽっちも思っていなかった。 「逃げよう」 そう言ったのは、シンちゃんだった。 そしてシンちゃんは、僕とそれから二人の仲間を誘って旅に出た。 まず、僕たちは駅へ行って、一番遠くの切符を買おうとした。 でもクラスで一番頭の良いサトルくんは、「一番遠くの駅は大きいから、人が多くてきっとすぐに見つかってしまうから、その一つ前にしよう」と言った。 僕たちはみんなその考えに賛成して、言われた通りにした。 電車に乗った時間は、一時間とそれから少し。 でもあの時の僕にとっては、もっとずっと長く感じた。 半分も過ぎると、僕は不安で泣きそうになっていた。 シンちゃんもサトルくんも、いつもより緊張した面持ちだったように思う。 でも、ケンちゃんだけは違った。 「腹減ったー」と騒ぎ出し、シンちゃんの持っていたお菓子を平らげると、呑気な顔して居眠りを始めた。 僕たちはそれを見て、ほんの少し笑った。
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